私たちは巨大な麦飯ビビンバ

令和4年10月25日
https://www.busan.kr.emb-japan.go.jp/img/b.gif<記事原文>
   
https://www.busan.com/view/busan/view.php?code=20131214000036

 このごろ私は麦飯ビビンバ(ボリパッ)にはまっている。
 毎週荒嶺山に登る10名余りの集まりがある。 朝早く金蓮山青少年修練院の入口で集まって、山の中腹まで登った後、下山する。下山後は車で龍湖洞にある麦飯ビビンバの店に移動して食事をする。
 
 この店のおかずは12~14種類。 昆布、ワカメ、カタクチイワシ、海苔などの海産物から、豆もやし、ほうれん草、キャベツ、キュウリ、切り干し大根、ワラビ、ニラなど各種ナムルに昔が思い出されるような味の味噌におこげまで出てくる。季節ごとに追加される唐辛子、ナス、山椒の葉など旬の野菜は、より一層、楽しみをくれる。 温かい麦飯にたっぷりおかずをのせ、適量のコチュジャンとごま油を入れて混ぜる。混ぜると各材料のコクが増す。 最近の言葉で言うならシナジー効果だ。私はこの麦飯が「めっちゃ(억수로)」好きなのである。

 荒嶺山(ファンリョンサン)登山後、麦飯ビビンバの店に立ち寄って
 韓日関係もおいしいご飯だったら
 
 釜山の人たちと一緒に山に登って麦飯ビビンバを食べながら世間話を交わし、1年を過ごした。みんなで春にはヤマモモの花を楽しみ、夏には蚊に刺され、秋にはハンノキの実を拾い、冬には寒さに震えたりもした。外国人は私一人で年齢も職業も違うが、この集まりでは全く違和感が覚えることがない。たまに意見の相違はあっても越えられないほどの壁はなかった。むしろ温かい同族意識さえ感じることが多い。根本的な感性、人間性という次元であまり抵抗を感じないのは、おそらく韓国人と日本人だからだろう。そのような意味で、やはり心が通じる私たちは一つだ。
 
 ただ、最近日韓関係が順調ではない部分もあり、思いがけないところでとんでもない悪口を言われて戸惑う時もある。そんな時、故人になった元駐韓日本大使の言葉を思い出す。 「日韓関係は良い時もあれば良くない時もある。しかし、そのようなことを繰り返しながら、韓日関係は必ず螺旋階段のように、さらなる高みへと発展していくことになる」なぜ大使は韓日関係が必ず、より高みへ発展していくと確信していたのだろうか。直接聞くことはできないが、韓国で立派な人たちと出会う中で、そのような確信を得たのだろうと推測している。
 
 私にもそのような確信の「原点」がある。 2011年の東日本大震災が東日本を襲った直後、釜山市民の皆様が真っ先に被災地に救援物資を送ってくださった。その後も嶺南地域の多くの方々が支援を惜しまなかった。その時の感謝の気持ちが私の「原点」だ。
 
 外交の本質は、こちらの要求を相手に無理矢理受け入れさせるものではない。解決が難しい問題ほど、受け入れ難い部分があることに気づき、共通の理解を得られる立場をできるだけ広げ、その上で発展的な関係を築いていくことにある。それはまるで砂漠の上に砂の楼閣を積むようなもので、忍耐が必要であり、また、果てしない作業である。したがって、外交の世界では先人たちが根気と知恵で積み上げてきた信頼と約束が何より大切だ。
 
 人口約3万3千人の対馬に昨年15万人の韓国人が往来し、今年はその数がさらに増え、17万人を超えるという。このような人的交流が対馬と釜山地域に及ぼす波及効果は相当なものであろう。また、嶺南地域と九州地域の間には、韓国と日本の自動車に使われる優秀な部品が行き来している。国境を越えたこの地域は、ヒト・モノ・カネが往来することで、今後さらに発展する可能性を秘めた宝物のような地域だ。
 
 韓国と日本にまたがる海は「巨大な器」だ。この器に韓国人と日本人という「米」と「麦」を入れて、ヒト・モノ・カネという「おかず」を加え、自由な往来を表す「巨大なしゃもじ」でよく混ぜてみよう。どれほど多様なシナジー効果を生み出すか、想像できないほどだ。
 
 私たちは無限の未来を持つ巨大な麦飯ビビンバ(ボリパッ)なのだ。